同じスウェットでも、触れるとぜんぜん違う。
軽くて乾きやすいものもあれば、ふっくらと空気を含むもの、
あるいは昔のアメリカのような、少しざらっとした質感も。
生地の編み方や糸の太さ、綿か化繊か。
そんな素材の違いが、実は着心地を大きく変えている。
今回はNANGA、A.G. SPALDING & BROS、ANATOMICA、Kepani、BOW WOW、MIXTAの6ブランドをピックアップ。
それぞれがスウェットという同じアイテムに、どんな素材と想いを込めているのか。
一緒にその手ざわりを探してみましょう。
【第1章:テクニカル × サステナブル】
NANGA ECO HYBRID SWEAT SERIES――フェレーヤーンが生み出す、やさしい快適さ。

着たときの気持ちよさを左右するのは、生地そのもの。
NANGAのエコハイブリッドシリーズに使われている「フェレーヤーン」は、
スペインの老舗紡績メーカー、ヒラチュラス・フェレ社(Hilaturas Ferre S.A.)が手がける再生糸です。

フェレーヤーンの原料となる裁断くずや古衣料。色ごとに選別され、再び糸へと生まれ変わる。
もともとは、縫製工場で出る裁断くずや着古した衣料など。
それらを細かく繊維まで分解し、もう一度糸として生まれ変わらせています。
このときに色ごとに仕分けを行うため、ほとんど染料や水を使わずに新しい糸ができる。
環境への負担を最小限に抑えながら、自然な色合いを生み出せるのがフェレーヤーンの特徴です。
素材は、リサイクルポリエステルとオーガニックコットンの掛け合わせ。
ポリエステルの軽さや乾きやすさ、コットンの柔らかさと吸湿性。
それぞれの良さをうまく掛け合わせることで、
軽やかでムレにくく、毎日着たくなるような着心地が生まれています。
さらに、糸をより合わせるときに独自の技術を使うことで、
肌に当たったときの毛羽立ちを抑え、すべすべとした触り心地に。
繰り返し洗っても型崩れしにくく、部屋干しでも乾きが早い。
そんな扱いやすさも、この素材ならではの魅力です。
【軽くて、洗えて、気持ちいい。】

ECO HYBRID BOX LOGO SWEATSHIRT
¥11,550(税込)
NANGAの象徴であるボックスロゴをプリントした定番スウェット。
フェレーヤーンを使った裏パイル生地はほどよい厚みで軽く、羽織ったときにやわらかく馴染む。
ラグランスリーブの動きやすさや、ファスナー付きポケットの実用性も魅力。
街でもキャンプでも、季節を問わず快適に着られる一枚。
【控えめなロゴが、さりげなく映える。】

ECO HYBRID MINI BOX LOGO EMBROIDERY SWEAT HOODIE
¥14,300(税込)
胸元に小さなボックスロゴを刺繍した、シンプルで上品なフーディ。
ふっくらとした裏毛パイルが心地よく、長時間着ても疲れにくい。
スナップボタン付きの襟元は、閉じれば防風性を高め、開けば軽やかな抜け感を演出。
アクティブにも、リラックスにも寄り添う万能な一着です。
【第2章:クラシック × オーセンティック】
A.G. SPALDING & BROS SWEAT SERIES――アスレチックウェアの原点を、現代に。

A.G.SPALDING & BROSは、19世紀後半のアメリカで誕生したスポーツブランド。
競技用具づくりから始まり、動きやすさと耐久性を求めたアスレチックウェアを開発。
その設計思想は、のちのトレーニングウェアやスウェットシャツの原型となりました。
2017年には日本で実名復刻を果たし、和歌山県の旧式吊り編み機で編んだ裏毛生地を採用。
ゆっくり編まれた生地はふっくらと空気を含み、身体に馴染む柔らかさと型崩れしにくい安定感を併せ持っています。
袖口の変形リブや両Vガゼット、丸胴仕様など、機能から生まれた合理的なディテールも健在。
歴史ある構造美を現代の着心地へ自然につなげた、スポルディングならではのコレクションです。

世界的に貴重な和歌山県にしか現存・稼働していない旧式の吊り編み機。

旧式織機でゆっくりと空気を含みながら織ることで、極上の肌触りと保温性を兼ね備えている。
【原点を受け継ぐ、現代のスタンダード。】


TRAINING SHIRTS(MOONLOID別注カラー)
¥25,850(税込)
A.G.SPALDING & BROSを象徴するトレーニングシャツ。
1930年代に登場したウール混スウェットをもとに、
現代の素材と構造で仕立て直したモデルです。
和歌山の旧式吊り編み機でゆっくり編み上げた裏毛生地は、
空気を含んでふっくらと柔らかく、着るほどに自然と身体に馴染みます。
軽さがありながら頼りなくならず、洗濯を重ねても形が崩れにくいのも特徴です。
袖口の変形リブや両Vガゼットなど、
クラシックな意匠と機能から生まれた構造美がバランスよく共存。
シンプルな佇まいの中に、スポルディングらしい実直さが表れています。


MOONLOID別注カラーは「AMBER YELLOW」と「CERULEAN」。
ヴィンテージのカレッジスウェットを思わせる色合いで、
日常のスタイルにほんのり彩りを添えてくれる仕上がりです。
【軽やかで、構築的。】


SIDE-LINE PARKA SINGLE(MOONLOID別注カラー)
¥30,800(税込)
ヴィンテージではダブルフェイス仕様として知られるサイドラインパーカーを、
現代のライフスタイルに合わせてシングル構造へアレンジしたモデル。
和歌山の旧式吊り編み機で編まれた裏毛生地は、
空気を含んでふっくらと柔らかく、軽い着心地が魅力。
シングル仕様にすることで、ダブルフェイス特有の重さや乾きにくさを避け、
日常で扱いやすい軽快さが加わっています。
着るほどに身体に馴染み、長時間の着用でもストレスの少ない仕上がりです。
ボクシンググローブ型のポケット、クロスネック、ロックフーディーなど、
動きやすさや快適さを追求して生まれたA.G.SPALDING & BROS独自の構造も継承。
クラシックな意匠と合理的な設計は、今の暮らしにも難なく溶け込んでくれます。


MOONLOID別注カラーの「AMBER YELLOW」と「CERULEAN」は、
ヴィンテージのカレッジスウェットを思わせる色合いで、
クラシックな佇まいに軽やかな印象を添えています。
【第3章:ユニバーサル × クラシック】
ANATOMICA SWEAT SERIES――普遍を、形に。

1950〜60年代のヴィンテージスウェットをもとに、
アナトミカが現代の生活に合わせて再編集した定番シリーズです。
一見シンプルに見えますが、着たときのラインがきれいに出るよう、
パターンと仕様に無駄のない工夫が凝らされています。


生地にはコットン90%、ポリエステル10%の裏起毛スウェットを採用しています。
コットンの柔らかさにポリエステルの軽さと耐久性が加わることで、
洗濯を繰り返しても型崩れしにくく、長く快適に着られる素材感です。
内側はふっくらと起毛しており、肌あたりがやさしく、
季節を問わず使いやすいバランスに仕上がっています。


柔らかさはありながらも、さらりとした質感が特徴。ポリエステルを配合することで軽くて重さを感じない。
脇に縫い目のない丸胴仕様や、肩の動きを妨げにくいラグランスリーブなど、
クラシックなディテールを再現しながら、快適さにも配慮された構造です。
過度な装飾を排した控えめなデザインは、日常着としてしっかり活躍してくれます。
【ベーシックを丁寧に整えた一枚。】

SWEAT RAGLAN CREW NECK
¥20,900(税込)
ゆったりとした身幅と、やや短めの着丈によるクラシックなバランスが特徴です。
ラグランスリーブと丸胴仕様の組み合わせによって肩まわりや脇のストレスが少なく、
裏毛の柔らかな肌触りも相まって、素朴ながら完成度の高いクルーネックに仕上がっています。
【立体的なフードがつくる、控えめな存在感。】

SWEAT RAGLAN PARKA
¥25,300(税込)
ヴィンテージスウェットをベースに設計された、アナトミカ定番のフーディです。
ゆったりとした身幅と短めの着丈によって、クラシックな佇まいを現代的に再構築しています。
立体的に組まれたフードや太めのドローコード、丸みのあるカンガルーポケットなど、
シンプルな中にもしっかりとした特徴が感じられます。
裏毛の柔らかなタッチで、軽快に着られるフーディです。
【第4章:ふっくら × リラックス】
Kepani ZIP UP CARDIGAN――毎日着たくなる心地よさ。

Kepaniのスウェットは、ふっくらとした柔らかさと軽さを併せ持つ、独特の着心地が魅力です。
MOONLOID別注モデルは、超長綿を旧式シンカー編み機でゆっくりと編み立てた裏毛生地を採用。
空気を含むような甘い編み目が着た瞬間にやさしい肌触りを生み出しています。

和歌山県に現存する、旧式のシンカー編み機。
72本の糸玉から一本一本の糸を紡ぎ、コンマ単位でシンカー編み機の糸を調整することで、吊り編みに近い風合いを作ることができる。
数あるMOONLOID別注の中でも、このZIP UP CARDIGANは定番のひとつとして長く支持されているモデル。
パーカーほどカジュアルになりすぎず、クルーネックより着脱しやすいという絶妙な立ち位置で、季節を跨いで活躍してくれます。


裏側は綿100%の裏起毛で、ふわっとした温かみがありながら、
シルエットが大きく膨らむことはありません。
リラックスした風合いと、すっきり見えるラインが両立しているため、
普段使いのスウェットとして無理なく取り入れやすい仕上がりです。


気持ち良すぎて、ずっと手で撫でていたくなるような質感。
前立てには、1940年代以前に見られるコの字留めのWALDESジッパーを採用。
シルバーのレールにゴールドのスライダーを組み合わせた別注仕様が、
控えめな存在感と上質さを添えています。
リブとガゼットの切り替えも強調しすぎず、スウェットらしい素朴さのまま
さりげなく表情を与えるディテールです。

1940年代以前に使用されていたWALDES社製のコの字留めジッパー。
先端にコの字型の留め具が付いているのが特徴で、ヴィンテージを象徴するディテールのひとつ。
【ふわっと軽く、すっと馴染む。】

MOONLOID × Kepani ZIP UP CARDIGAN
¥23,100(税込)
軽くて柔らかな裏起毛と、すっきりとしたシルエットを備えたジップアップスウェット。
フードがないためインナーとしても使いやすく、ジップの開閉で温度調整がしやすいのもポイント。
気負わず着られ、日々のスタイルに取り入れやすい一着です。
【第5章:ヴィンテージ × エイジング】

BOW WOW SWEAT SERIES――古びた美しさを、今に。
BOW WOWは、2017年に「Diggin’ In The Crates」というコンセプトを掲げてスタートしたブランド。
ただ古い服を模倣するのではなく、胸が高鳴る最高の一着に宿るときめきや、時間の経過が生み出す愛嬌まで含めてデザインに昇華しているのが特徴です。
スウェットのボディには、中肉厚の裏毛生地を採用。
コットンをベースにした柔らかな風合いで、洗いを重ねても硬くならず、着るほどに馴染んでいく素材感です。
そのヴィンテージの育ち方を理解したうえで、退色・擦れ・フェードなどの加工を重ねるため、
新品でもまるで長年着込んだスウェットのようなリアリティが生まれます。

柔らかさとハリのある生地は、着こんでさらにクタクタにしていくのが楽しみになる。
使い込むほど深みが増す表情、リアルな退色や擦れ感、消えかけたプリントの温度。
そうした古びた美しさを、現代の技術とセンスで再構築する。
それがBOW WOWの真骨頂と言えます。


今回紹介する2つのスウェットも、ボディの柔らかい裏毛素材にエイジング加工を重ね、
ひと目でBOW WOWの世界観を感じられる仕上がり。
今作られているのに、昔からそこにあったような一枚を体現するラインナップです。
【象徴的なイーグルが宿す、空軍のスピリット。】

U.S. AIR FORCE EAGLE SWEATSHIRT AGED
¥35,200(税込)
アメリカ空軍を象徴するモチーフであるイーグルを、フロッキープリントで表現したスウェット。
1950年代当時の技法を再現した植毛フロッキーは、立体的でベルベットのような質感が特徴。
経年や洗濯で剥離しやすかったため、希少性そのものが価値となっています。
その文脈まで丁寧に再現した、BOW WOWらしい一枚です。

フロッキーならではの毛羽立ちやクラックの出し方など、緻密で計算されたディテールは必見の価値あり。
希少なブラックボディにフェード加工を重ね、日焼けや摩耗を繰り返したような深みのある色調へ。
首元や裾リブに浮かぶ濃淡、かすれたプリント、全体に広がるモノトーンの揺らぎ。
ヴィンテージスウェットが歩んできた時間の流れを、細部にわたって表現しています。

当時存在し得たかもしれない一着を追求した、ヴィンテージ好きには堪らない仕上がりです。
【存在しない大学が生む、架空のヴィンテージ。】

ST. MACLAREN UNIV. HOODIE AGED
¥36,300(税込)
架空の大学 ST. MACLAREN UNIVERSITY を着想源にしたフーディ。
カレッジスウェットの文脈に、BOW WOWならではの遊び心と経年表現を掛け合わせています。
インディアンヘッドのプリントは掠れやクラックの質感を加工で表現し、長年着込まれたような存在感へ。
ボディには淡いピンクの裏毛スウェットを採用し、肩や袖の濃淡、リブの自然なフェードなど、
ライトカラーならではの退色感を丁寧に落とし込んでいます。
フードまわりの使い込んだムードと裏毛の柔らかな落ち感が相まって、
新品でも肩の力が抜けるリラックスした表情に。


古着ラバーも舌を巻く、経年加工の技術の高さ。
架空の大学という設定ながら、仕上がりは古着のリアルと直結。
BOW WOWの加工技術と想像力が凝縮された、愛着の湧く特別な一着です。
【第6章:アメリカン × ヴィンテージ】
MIXTA SWEAT SERIES――アメリカらしさを、日常に。

アメリカ・ロサンゼルスを拠点に、2010年にスタートしたブランド「MIXTA(ミクスタ)」。
古着業界で長く経験を積んだデザイナーが立ち上げた背景からも分かるように、
スウェットやTシャツといったベーシックな日常着に本物のアメリカを宿すことを大切にしています。
素材には、アメリカ産コットンならではの乾いたタッチを持つ裏毛生地を採用。
ライトな厚みで重さが出すぎず、裏起毛はふんわり柔らかく肌に気持ちよい仕上がりです。
着込むほどに生地が馴染み、最初はやや粗野だった表面が少しずつ柔らかく変化していくのも魅力。
この“育つ感覚”は、アメリカ製スウェットならではの奥行きといえます。

どこか70年代のカレッジスウェットを思わせる軽さで、こういうライトウェイトな雰囲気にアメリカ製らしさを感じる。
糸の生産から染色、縫製、プリントに至るまで、
すべての工程をアメリカ国内の自社工場で一貫して行うという徹底した姿勢も特徴。
そのこだわりが、古着と現行品の境界を曖昧にするようなリアルな風合いを生み出しています。
プリントは、デザイナーが所有する膨大なヴィンテージ資料をもとに再構築されたグラフィック。
掠れた風合いや少しラフな線のタッチが、アメリカらしい無骨さと遊び心を添えます。
どこか懐かしく、それでいて現代のスタイルにもすっと馴染む絶妙なバランスが魅力です。


今回紹介するスウェットも、
毎日のスタイルにアメリカンヴィンテージの空気をほんの少し。
そんなMIXTAらしい魅力がしっかりと感じられるラインナップです。
【今の気分に合う、王道カレッジ。】

COUGAR CREW SWEAT
¥14,850(税込)
古着のカレッジスウェットを思わせる「COUGAR TRAILS」グラフィックを載せたクルーネック。
柔らかな裏起毛とライトな厚みのアメリカ製ボディは、着込むほどに自然な風合いが増していきます。
プリントはやや掠れた質感で、ヴィンテージらしいムードをほどよくプラス。
カラーはアイボリー系の「NATURAL」、杢調の「ASH GREY」、深みあるネイビーの「NIGHT OCEAN」、フェード感が魅力の「VINTAGE BLACK」と多彩に揃えました。
一枚でもレイヤードでも使いやすいバランスで、ロングシーズン活躍する万能なスウェットです。
【デイリーにちょうどいいアメカジ。】

WILDCATS CREW SWEAT
¥14,850(税込)
WEST COAST WILDCATS をテーマにした存在感あるグラフィックが魅力のクルーネック。
柔らかな裏起毛とライトな厚みのボディに、古着のスウェットを思わせる落ち着いたカラーバリエーション。
アメリカ製らしいドライなタッチと、着込むごとに身体へ馴染んでいく生地感も特徴。
一枚でもレイヤードでも使いやすく、ワードローブのベースとして頼れる一着です。
スウェットといっても、軽さも、柔らかさも、暖かさも、それぞれまったく違います。
触れるだけで性格がわかるような、その奥深さがこのカテゴリーの面白さでもあります。
今回紹介した6つのブランドは、どれも違った方法で着心地をつくっていました。
リサイクル糸で軽くしなやかに仕上げたNANGA。
吊り編み機のふっくら感を今に伝えるA.G. SPALDING & BROS。
素朴で飽きのこない裏起毛が心地よいANATOMICA。
一年中頼れる柔らかさを追求したKepani。
加工の表現によってヴィンテージの魅力を引き出すBOW WOW。
アメリカ製らしいライトウェイトを日常に落とし込むMIXTA。
同じスウェットでも、素材が変われば表情も触り心地も大きく変わります。
そんな違いを楽しんでいただけていたら嬉しいです。
あなたの気分に合う一枚が、きっと見つかりますように。
fujimori
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