
MAKERSについて

MAKERS(メイカーズ)は、2009年に誕生した日本のシューズブランドです。
デザイナー・手嶋慎氏が高円寺でヴィンテージショップを営んでいた経験を経て靴づくりの道へと進んだことが、その原点となっています。
服飾専門学校で靴づくりの基礎を学び、その後はパターン設計を数年かけて集中的に習得。
自作のシューズを発表した個展が好評を博したことをきっかけに、ブランド立ち上げを決意しました。
「服に合わせやすい靴」を信条とする手嶋氏は、自身が好むデニムなどの日常着との相性を重視し、丈感やバランスにまで目を配ったデザインを行っています。
また、靴づくりにおいては「眺めること」を大切にしており、型紙や木型、アッパーや完成品をあらゆる角度から見つめ、微細な修正や改良を重ねていきます。
完成後もユーザーが靴を履いている姿や、そこから生まれるエイジングの過程を想像し、必要に応じて仕様をアップデートしていく。
その姿勢もまた、MAKERSのものづくりにおける魅力のひとつです。
HORSE BUTT(ホースバット)とは

MAKERSが展開する中でも、MOONLOIDがセレクトする各モデルには「ホースバット」と呼ばれる馬の臀部の革が使用されています。
ホースバットは繊維密度が高く、堅牢でありながら、しなやかさと独特の艶感を兼ね備えた素材です。その希少性と、履き込むことで深まる経年変化の美しさから近年では特に注目を集めています。
MAKERSでは、モデルの設計意図や構造に応じて最適なホースバットレザーを選定しています。今回は、特に知名度の高いアメリカの老舗タンナー「HORWEEN(ホーウィン)」社とイタリアの老舗タンナー「GUIDI(グイディ)」社の革を使用したモデルをご紹介します。
HORWEEN社製のホースバットは、原厚3.5〜4mmのフルベジタブルタンニン鞣しで仕上げられた革を、約2.5mmに漉いて使用。ナチュラルなグレージング仕上げの状態でアメリカから輸入し、日本国内のコードヴァンタンナーで染色を施すことで、深みのある「茶芯」の表情を備えた独自の風合いに仕上がっています。
一方、GUIDI社製のホースバットも同じくフルベジタブルタンニン鞣しによる「茶芯」仕様で、より柔らかくしなやかな質感と独特の発色が特徴です。HORWEENとは異なる個性を持ち、エイジングの過程で生まれる色の深みや皺の出方にも違いが見られます。
どちらのレザーも履き込むほどに皺や擦れに沿って芯の色がにじみ出し、革全体に奥行きのある艶と立体感が生まれていきます。
こうしたエイジングの魅力こそが、ホースバットレザーの最大の醍醐味と言えるでしょう。
LINEUP(ラインナップ紹介)
HORSE SINGLE – HORWEEN BUTT

1900年代初頭のゴールドラッシュ時代。
アメリカのフロンティアで一攫千金を夢見た男たちが履いていたような、無骨で土臭いムードを宿したプレーントゥシューズです。
デザインベースとなっているのは、当時の労働者が愛用していた簡素な外羽根ブーツ。
無駄を削ぎ落としたシルエットには、実用本位の佇まいが色濃く表れています。
アッパーには、HORWEEN社製のホースバットを使用。
先芯のない構造とアンライニング仕様によって、足あたりは非常に柔らかく、履き込むことでつま先が自然に潰れ、シワや傷が刻まれることで全体が引き締まり、風格が増していきます。

製法はグッドイヤーウェルテッド。
外羽根6ホールのプレーントゥという一見シンプルなデザインながら、羽根まわりの仕立ても丁寧で、余計な厚みを抑えたすっきりとした見た目に仕上がっているのも特徴。
アウトソールにはオイルをたっぷり含ませたベンズレザーのシングルソールを採用。ヒール部分は、シングルミッドソールの上にDr.Soleのヒールパーツを装着した構造で、高い耐久性と適度な重厚感、そして優れた返りの良さを両立しています。



つま先の内側には吸湿性に優れたコットンヘリンボーンファブリックを配し、快適な履き心地にも配慮されています。
付属のカーキ色の替え紐は、スタイリングに合わせて雰囲気を変えるアクセントになります。

履き込むほどに表情を深めていく、MAKERSの美意識が息づいた一足です。
BONE – HORWEEN BUTT

MAKERSを代表するモデル、HORSE SINGLEをベースに再構築されたミッドカットブーツ「BONE」。
着想源となっているのは、ミリタリーブーツやサービスシューズなど、戦中から戦後にかけて登場した無骨な実用品。その設計思想を踏襲しながらも、全体のフォルムはあくまで均整がとれており、武骨さの中にもどこか品の良さが漂います。

アッパーには、HORWEEN社製のホースバットを採用。原厚から適切に漉きをかけた革は、しなやかで柔らかく、先芯のないアンライニング仕様と相まって、履き始めから足にすっと馴染みます。

履き込むほどにつま先は潰れ、シワや傷が加わることで、無骨で土臭い存在感へと変化。履き潰すこと自体が、このブーツの魅力を最大限に引き出す過程とも言えるでしょう。
製法はグッドイヤーウェルテッド。オイルをたっぷり含ませたベンズレザーのアウトソールに、シングルミッドソールを組み合わせ、ヒールにはDr.Soleのパーツを装着。耐久性と安定感に優れながら、返りの良さにも配慮された構造となっています。

つま先の内側には、吸湿性の高いコットンヘリンボーンファブリックを使用。
さらに、こちらもカーキ色の替え紐が付属しています。

履き込み、味わいを刻んでいく過程すら、愛おしくなる一足です。
HORSE ENGINEER – GUIDI BUTT

1940年代のエンジニアブーツをベースに、クラシックな10インチハイトで構築されたHORSE ENGINEER。
無駄を削ぎ落としたストイックなデザインは、武骨な佇まいでありながらも、どこか洗練された印象を与えます。ワークやミリタリーといったジャンルを超えて、さまざまなスタイルに馴染みます。
アッパーに使用されているのは、イタリア GUIDI社製のホースバット。
フルベジタブルタンニン鞣しと染料染めによって仕上げられたこの革は、馬革ならではのハリや光沢を保ちつつ、GUIDI特有のしなやかさと柔らかさを備えています。

足を入れた瞬間から感じられる、吸いつくようなフィット感。履き込むごとに浮かび上がる皺や擦れが芯の色と混ざり合い、革全体に深みと立体感を生み出していきます。
先芯を省いたプレーンなトゥは、足の動きに応じて自然に形が崩れ、履き手の足と共に独自の表情へと育っていきます。

製法はグッドイヤーウェルテッド。
アウトソールとヒールには、Dr.Sole製のセパレートソールを装着し、高い耐久性とグリップ性を確保。程よい重厚感と、しなやかな返りの良さを両立しています。


エンジニアブーツにありがちな重さや硬さを感じさせない、柔軟で軽やかな履き心地も大きな魅力です。
スタイルに芯を通しながらも、足元を締めすぎない。そんなバランス感覚に長けた一足です。

WALK OVER THE GROUND WITH PRIDE

誇りを持って、地面を歩く。
これは、MAKERSの靴のアウトソールに刻まれた一文であり、ブランドが靴づくりに込めた哲学そのものです。
紹介した三モデルに共通しているのは、設計の巧みさとホースバットレザーの魅力、そして履き込むことで深まるエイジングの美しさ。
デザインの美しさだけでなく、構造や履き心地にもこだわり、履き手とともに育つことを前提に作られています。
しなやかで堅牢、そして時間とともに味わいを増していく一足は、日々の装いに自然と溶け込みながら足元に芯のある強さと深みを与えてくれるはずです。
時間の経過とともに刻まれていく革の表情に、自分自身の誇りを重ねながら歩んでいく。
それが、MAKERSの靴が持つ本質的な魅力です。
fujimori
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